こんにちは。三重県四日市市でことばの教室を運営しています、言語聴覚士の柿森です。

僕は言語聴覚士になって9年目(2023年現在)ですが、いわゆる言語リハビリ難民と呼ばれる方々にしばしば出会ってきました。

今回の記事ではそれらの例や要因、僕の取り組みについてご紹介していきます。

 

 

1.失語症の男性Aさん

 Aさんは脳卒中を発症した後、急性期病院入院を経て僕が以前勤めていた回復期病院に入院し、リハビリの甲斐あってご自宅での生活に戻られました。

失語症友の会で再会したAさんに、自宅生活での様子をお伺いしたところ、麻痺や失語症を抱えながらも、奥様の助けやサービスの手を借りながら色んな場所にお出かけする生活をされていました。

一見充実した生活を送られているように聞こえましたが、その後に続いてAさんが言われたのは、福祉サービスとリハビリサービスの少なさへの嘆き。

リハビリに関して言えば、言語リハビリを週に2回受けているようですが、ご本人としては不十分に感じているとのこと。

手元にあった手帳から見えたのは、文字をびっしりと書かれた自主練習の様子でした。

「お金はどんだけ払ってもいい」と、リハビリサービスを受ける機会が増えることを切に願われていました。

現状の言語リハビリの機会に満足できず、増やしたくてもそれが叶わないというケースです。

 

2.失語症の女性Bさん

 僕は回復期病棟に勤めながら、兼務でデイケアにも所属していました。そこにやってこられたのがBさんでした。

実は、それ以前には身体麻痺のリハビリを目的に別のデイケアに通われていたのですが、そこのスタッフさんからもっと充実した身体リハビリを受けて欲しいとのことで僕の所属するデイケアに移って来られました。

脳卒中を患う患者の中ではBさんは若く、症状の回復が社会生活の充実に大きく影響していることが背景にありました。

言語リハビリに関しては以前のデイケアには言語聴覚士は所属していませんでしたが、新しいデイケアには僕がいたので、移ってきたついでに言語リハビリも受けようかということになりました。

しかし、いざお話しを伺ってみると失語症による苦しみは大きいことがわかり、本腰を入れて言語リハビリを進めていくことになったのです。

もし、身体リハビリ目的でも施設を移っていなければ、言語リハビリにはその後も出会うことがなかったでしょう。

言語障害への苦しみがあるのに、環境によって言語リハビリを求める機会を奪われたケースです。

 

3.構音障害の女の子Cちゃん

 滑舌に苦手さがあり、就学前に医療機関の言語トレーニングを受けていたCちゃん。

ある程度トレーニングが進んだところで、「あとはご家庭で絵本を読んで練習してください」とトレーニングを終了にされてしまいました。

付き添っていたお母さんとしては、それで本当に良いのか?と不安があったそうですが、“先生に言われたこと” と思い従ったそうです。

しかし、Cちゃんが小学校2年生になっても滑舌の苦手さは残ったまま。

お母さんとしては、1度終了になっているため、再度言語トレーニングを受けることに対して気が引けるようです。

言語トレーニングに満足のいく結果が得られる前にその機会が途絶え、再度受けるのにもハードルが高くなっているケースです。

 

 

言語トレーニングを取り巻く現状

 言語障害を発症する原因のひとつに脳卒中がありますが、その疾患をもった方がまず言語リハビリを受けることになるのは、入院している病院でしょう。

入院中は毎日の手厚い言語トレーニングを受け、さて自宅へ帰るとなった時、退院後の言語リハビリは週に1〜2回に減少、ひどい場合には受けられないなんてケースもあります。

さらに言えば、まだ言語症状の回復率が大きい状態でも退院を勧められてしまうケースがあります。

この背景には、医療保険制度の意向による入院期間の短縮化や、介護保険制度の仕組み、生活期で働く言語聴覚士の不足が挙げられます。

 

 お子さんの場合では、病院や療育センター、児童発達支援などで言語聴覚士によるトレーニングを受けられます。

神経発達症の場合にはそこに至るまでに、保健師や保育園の先生に勧められてようやく療育につながることができ、自分から医師等に相談できる人は少ないように思えます。

中には検診で「様子見」とだけ言われて、その後親御さんがどこにも相談できず悩みを抱えたまま過ごしてしまうケースもあります。

さらに言語聴覚士に繋がったとしても、トレーニングは2ヶ月に1回の頻度しか受けられない、詳しく話を聞きたいけどトレーニング時間が少ないから気が引けるなど、不安が残ることもあります。

この背景には、気軽に相談できる場所の少なさと、小児分野に所属している言語聴覚士の少なさがあると考えます。

 

 

僕にできること

 この現状に対し、僕にできることは何かを考えました。

その結果、医療制度や介護制度に縛られず柔軟に対応できるように、保険外でのことばの教室を開室しました。

・希望するだけトレーニングが受けられる環境
・どこでも気軽に相談できるようにオンラインでの相談窓口
・行政と連携し、こちらから地域に出向いていく活動
・情報を得られやすいようにブログやSNSでの発信
・言語障害を引き起こす疾患の予防への取り組み
など

必要とされる人や場所に言語聴覚士の力を届け、少しでも言葉やコミュニケーションで悩まれる方が少なくなるように取り組んでいます。

 


【ことばを支援するSakuLag】

・三重県四日市市桜町 四日市ICから車で5分
・言語聴覚士による ことばの教室
・人生の潤いをコミュニケーションからサポート
・医療・福祉現場で12年目のキャリア
・ホームページ:https://kotoba-sakulag.com
・インスタグラム:https://www.instagram.com/kotoba_sakulag/?hl=ja
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