こんにちは。
三重県四日市市で民間のことばの教室「ことばを支援するSakuLag(サクラグ)」を運営している、言語聴覚士の柿森です。
先日(R7.7.20)当教室初の試みとして、親子のコミュニケーションをテーマにした「療育ダンスワークショップ」を開催しました。
ダンスとことばは一見遠いようで、実はコミュニケーションという点でとても深くつながっています。
その両方を組み合わせながら、親子の絆に新たな風を吹き込むような時間を目指しました。
ダンスで親子の関係をもう一歩深く
いつもは教室で、お子さんと一対一で向き合う機会が多い私ですが、
ご家庭での関わりがもっと豊かになるような“きっかけ”を作りたいという思いがありました。
そこでタッグを組んだのが、現役ダンサーのL!LL(リル)さん。
いわゆる“きょうだい児”でもあるL!LLさんは、ダンスを通して「人と人がつながる喜び」をよく知っています。
わたし自身もダンスの経験があり、言語聴覚士として「人と人が関わる仕組み」を考える立場から意気投合し、今回の企画が実現しました。
今回のワークショップでは、参加者さんに1つの目標をお伝えしました。
それは「お子さんの新たな一面を1つ以上見つけること」。
もちろん参加者さん任せではなく、それができるような工夫を各所に散りばめました。
場所は鈴鹿市のスタジオNOAさん
ワークショップの会場は、鈴鹿市にあるスタジオNOAさん。
明るく清潔感のあるスタジオで、親子で動くにはちょうどよい広さ。
初めての方には何かとハードルの高いダンスですので、少しでも安心して足を踏み入れられる空間にしたいと思いました。
親子で「支え合う」「まねる」「楽しむ」
ワークショップのプログラムは以下のような流れで進めました。
1.心交わる準備体操
まずは親子で向かい合い、手をつないだり背中を合わせたりしながら体をほぐしていきます。
“支え合う”ことで自然と笑顔や声が出てくるこのパート。はじめの緊張を和らげる狙いもあります。
保護者さんにとってはお子さんに「支えられる」「手を引いてもらう」場面も作りました。
2.音や人に合わせて動こう
次は、だるまさんが転んだのアレンジしたものや、じゃんけん列車をアレンジしたものを、音に合わせながら行いました。
ここでは、親子だけでなく参加者さん同士の交流も生まれます。
L!LLさんの軽快な声かけで、子どもたちの目がどんどん輝いていきました。
その後は、前に立つL!LLさんの動きを真似する遊びも行いました。
手を広げたり、足をクロスしたり、みなさん上手に真似が出来ていました。
3.TikTokを撮ろう!
最後は短い振り付けに挑戦。
ここまでに「音に合わせて動く」「動きを真似する」遊びをしてきたことで、振り付けを覚える感覚がすでに身についています。
用意していた振り付けは簡単に覚えてしまい、なんと振り付けを追加することに!
みなさん真剣な眼差しでL!LLさんの動きを覚える姿がとても印象的でした。
締めくくりには、全員で踊る様子を動画撮影。
後日、動画を参加者の方々へプレゼントとしてお渡ししました。
それを観ながらまた親子の会話になると嬉しいですね。
お子さんの真剣な顔、保護者さんの優しいまなざし。素敵な思い出になったのではと思います。
最初は緊張、でも最後は…
ワークショップスタート直後は、やはり少し硬さのある雰囲気でした。
「ダンス…大丈夫かな?」と不安そうなお子さんの表情も。
でも、和気あいあいとした雰囲気で進む中で、お子さんたちの笑顔が少しずつ増えていきました。
休憩時間には好きなインフルエンサーの話題で盛り上がる場面も。
気づけばスタジオ全体が明るい空気に包まれていました。
最後に「お子さんの新しい一面をみつけられたか」を確認すると、なんと全員の親御さんが手を挙げてくださいました。
ダンスへの興味、真剣に打ち込む姿、他者との関わり方、背中を押す力強さ…、いろんな発見があったことを期待します。
届いていた “想い”
参加された保護者さんからは、「ダンスに興味はあるけど、一般のダンス教室に通うのはハードルが高い」というお悩みが聞かれました。
実は今回のイベントは、リトミックやダンス教室とは少し違う、ちょうどその “あいだ” を意識して構成を練りました。
とても満足だったようで、ぜひまた開催してほしいとのご要望までいただけました。
課題点
ただ一方で、定員に対して参加者数が満たなかったという課題もありました。
原因としては以下のことを考えます。
1.親子でダンスというハードル
ただでさえダンスというものの敷居の高さに加え、保護者さんによっては「自分も踊るの?」といった不安を感じた方もいらっしゃったかもしれません。
2.告知不足
今回は主に紙チラシでの “オフライン中心” の告知を行いました。
SNSなどの活用が不十分だった点は、今後改善していきたいと思っています。
3.ニーズが合っていない?
世の中のニーズが把握しきれていない可能性もあります。
これは地道に実績を重ねながら、より正確に捉えていく必要がありそうです。
おわりに
言語聴覚士の私に寄せられるお悩みには「ことばが出ない」「会話がうまくできない」というものも多くあります。
でも、ことばだけでなく、目線や表情、身振りにも、たくさんの“伝える力”が宿っています。
それだけでなく、物事に取り組む姿勢、相手への接し方などからも気持ちは伝わります。
まずは人と交流する経験を重ね、相手への興味や関わろうとする意欲を育み、それがことばへと繋がっていくのです。
今回のワークショップは、それを再確認できた大切な機会でした。
参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。
今回の経験を活かし、次回に繋げていきたいと思います。
引き続き、みなさんの人生が豊かになるよう、ことばやコミュニケーションからお力添えできるように頑張っていきます。