こんにちは。
三重県四日市市にある民間のことばの教室「ことばを支援するSakuLag(サクラグ)」です。
今回は「失語症患者の家族が押さえておきたい日常会話のポイント」というテーマでお話ししていきたいと思います。
理解しやすい働きかけ
日常会話は失語症の方にとって生活の一部であり、言語能力を試され、発揮する場でもあります。そのため、ご家族としては、話しかけてあげることがリハビリを提供することになっていきます。
話しかけのポイントは、ご本人の理解度に合わせた声掛けをすることです。文章の長さ、表現の複雑さ、使用する言葉の親密度など、ご本人が理解できる範囲の表現を行っていきましょう。
例えば、長い文章では理解が難しい方には、
「今日は役場に障害者手帳の手続きに行くから、10時までに出かける準備をしておいてね。」よりも、
「10時に役場に行くよ」「障害者手帳の手続きね」「トイレ済ませておいてね」の方が理解しやすいです。
また、耳から聞いた情報だけでは理解が難しい場合には、身振りを交える、実物(この例では手帳)を見せる、予定を書いておくなど、視覚的な情報を加えることで理解がしやすくなります。
これは、失語症以外にも、記憶力や注意力が衰えてしまった方にも有効です。
伝えやすいアシスト
日常会話は、自分の意見を伝えることも必要です。
話すことにおいては、失語症のほとんどの方に見られる症状が「言葉が上手く言えない」ことだと思います。
日常会話中、ご本人が話す際のご家族の基本姿勢としては「十分な間をもってあげる」ことです。
これにより、ご本人は安心して会話に臨むことができると思いますし、発話する機会を持ってもらうことにもつながります。
ご本人が話す隙もないくらいにご家族が話してしまうと、話す機会を失い、そのうちに意欲まで低下してしまいます。
また、言葉が上手く言えないことにも大きく分けて「言葉が思い浮かばない」「違う言葉へ言い誤ってしまう」の2種類があります。
「言葉が思い浮かばない」場合には、まずは、十分に間を持って言葉が思い浮かぶのを待ってあげましょう。それでも言葉が浮かばないようであれば、会話の流れから推測できる言葉を伝えてあげてアシストしてあげましょう。あまり間を持ち過ぎるのも逆にプレッシャーとなることがありますので、程よいところで助け舟を出してあげるのがベストでしょう。
「違う言葉へ言い誤ってしまう」場合には、一つ一つ厳密に指摘することはせず、汲み取れた内容をさりげなく正しい言葉に変えて伝えてあげましょう。正常な人が言い間違った時に、確認で言い直してあげるような、それと同じような感覚です。
中には、文字を書くことが気持ちを伝える手段やヒントになる方もいます。私の経験上、メモ帳や電子パッドの使用がすごく有用であるにも関わらず、持ち歩くのが面倒などの理由で日常会話場面での使用頻度が低いことが多いです。なので、ご家族としては、言葉が出にくそうにしている時に「文字を書いて」と言ってあげることで、ご本人の言語能力を最大に発揮したり、会話をスムーズに進行したりすることに繋がります。
以上のようにして、本人の能力に合わせた日常会話を行うことで、言語能力を活用する機会を持ち、少しずつ回復へと向かうことができます。
失語症の重症度や症状は、人によって様々です。そのため、今回ご紹介した内容がそのまま当てはまらない方も多いと思います。ですので、ご本人に一番適した話しかけの方法は、言語聴覚士などの専門職に確認を取ることが重要となります。すでに言語聴覚士からの支援を受けている方は、積極的に疑問を投げかけ、アドバイスを求めると良いでしょう。言語聴覚士の支援が身近にない方は、役場の相談窓口等の他、オンラインで活躍している言語聴覚士にアクセスしてみるのも良いでしょう。
【ことばを支援するSakuLag】
・三重県四日市市桜町 四日市ICから車で5分
・言語聴覚士が運営する民間のことばの教室
・人生の潤いをコミュニケーションからサポート
・医療・福祉現場で13年目のキャリア
・ホームページ:https://kotoba-sakulag.com